会社の業績を優先してきた結果、「個人資産を調べてみたら想像よりも資産がなく、不安になった」という経営者の方もいらっしゃるかもしれません。老後不安を解消するための資産形成は欠かせませんが、漠然とした不安を抱えるよりはアンリタイヤメント(生涯現役)な、無理のない働き方、生き方を目指すのも一考です。
老後に「悠々自適」となり、テレビの前から動けなくなったある男性
「趣味や旅行を存分に楽しもうと意気込んでいたんです。ただ、最初の数ヵ月は友人と飲んだり、元同僚とゴルフをしたりと楽しんでいたんですが、次第に手帳の予定が埋まらなくなった。気づけば誰からも連絡が来なくなり、ずっと家で過ごすようになりました」
(中略)
「家にいても気詰まりなのですが、出掛ける気にはなれませんでした。毎日、誰からも連絡は来ないし、病院以外では名前も呼ばれない。だんだん、昔の嫌な思い出が蘇ったり、『自分の人生はなんだったんだ』という思いばかりに囚われるようになりました」(木村さん)
「病院以外では名前も呼ばれない」とは、なんて哀しい一文なのでしょうか…。この記事によると、老後は約8万時間あるそうです。「8万時間もある」と感じるか、「8万時間しかない」と感じるかは人それぞれですが、その時間をどう過ごすかによって人生の満足度は変わりそうです。
24時間×365日×20年(65歳~85歳)だとすると、17万5200時間。
人生100年時代だとその倍ですから、30万時間以上ということになります。お金の使い方と同様、時間の使い方にも、その人の人間性が表れるでしょう。どうせなら、精神的に豊かな30万時間を過ごしたいものです。
『定年後 – 50歳からの生き方、終わり方』楠木新 著
自営業などを除けば誰もがいつか迎える定年。社会と密接に関わってきた人も、組織を離れてしまうと、仕事や仲間を失って孤立しかねない。お金や健康、時間のゆとりだけでは問題は解決しない。家族や地域社会との良好な関係も重要だ。第二の人生をどう充実させたらよいか。シニア社員、定年退職者、地域で活動する人たちへの取材を通じ、定年後に待ち受ける「現実」を明らかにし、真に豊かに生きるためのヒントを提示する。
著者略歴
楠木 新
1954年(昭和29年)、神戸市に生まれる。京都大学法学部卒業。大手生命保険会社に入社し、人事・労務関係を中心に、経営企画、支社長等を経験。勤務と並行して、大阪府立大学大学院でMBAを取得。関西大学商学部非常勤講師を務め、「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年、定年退職。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表、神戸松蔭女子学院大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
前述の週刊現代の記事でもコメントがある楠木新氏の著書がこちらです。
人生は後半戦が勝負
75歳までの「黄金の15年」
という、ポジティブな言葉が書かれています。老後が約30万時間あるとはいっても、元気に活動できるのは70代のうちでしょうか。黄金の15年という言葉も納得です。気になる方は、ぜひご一読ください。
アンリタイヤメントという生き方
「FIRE(経済的自立と早期リタイア)して悠々自適な生活がしたい」
「なにかに追われる毎日から脱したい」
「好きな人とだけ会って、好きなように過ごしたい」
と望む人は多いですが、そもそも今の仕事は、それほどまでに苦痛で苦行なのでしょうか。楽しいと感じる瞬間も、やりがいを感じる瞬間もあるはずです。ついつい苦しい部分に注目してしまいがちですが、どんな仕事でも「100%楽しい仕事」は存在しないでしょう。楽しいことなど、10回に1回くらいあれば十分です。
もしも老後という漠然とした不安を抱いているなら、まずは人生計画を立てることをオススメします。そして、いつ頃・どんなときに・なにに使う・いくらくらいのお金が必要なのかを可視化してみてください。それだけでも、漠然とした不安は解消されるでしょう。
そして、今の会社や事業を含めた資産に眼差しを向け、悲観しないことです。有形資産・無形資産ともに、これまで築き上げてきた資産がたくさんあるでしょう。それらを活かして、アンリタイヤメント(生涯現役)をコンセプトに残りの人生を再設計するのも、豊かな30万時間を過ごすことにつながっていくと思います。