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投資で資産を失うのは一瞬

パンデミックや戦争など、不安感が世界中で広がるなか、それに便乗する詐欺話が出回っています。どんな時代にも、不安を煽る酷い人たちはいるものです。不況が続けば、「今の収入源だけには頼れない」「投資や資産運用で資産を増やさないと」という心理が強まり、怪しい投資話にも乗ってしまいがちです。まずは、詐欺師たちがいることを知ることが重要でしょう。

“ちょっと気の毒”な日本の投資環境


日本の終身雇用制度はとうに崩れ、会社が一生涯の面倒をみてくれる時代ではなくなりました。国民一人ひとりが投資や資産運用によって生活を守り、豊かになる術を学ぶ時代になった、とも言えます。

日本政府も、預貯金から投資・資産運用にお金を回そうと優遇制度をつくっていますが、国民全般として投資文化が根付いたとはまだまだ言えないでしょう。

「投資は怪しい」
「投資は危ない」

というイメージが強いのが現状です。その背景には、日本の“ちょっと気の毒”な投資環境があるでしょう。

まず、欧米や中華圏と違い、日本には投資や資産運用について気軽に話せる環境があまりありません。これは、「人前でお金の話をするのは恥ずかしいこと」という心理が影響しています。人前では堂々と話せないので、おのずとネットで情報収集することになります。

しかしネットは、玉石混交の情報が溢れているわけです。

なかには、「投資リテラシーの高い人が、リテラシーの低い者を養分にする」という恐ろしい世界が潜んでいることも知っておかなければいけません。

さらに、日本の証券会社や投資不動産会社などのアセットに関わる業界は、「億以上の現金を持っている人だけを本当の顧客として扱い、それ以下の顧客は顧客ではなく“利用者”などと呼び、養分や出口にしたがる傾向が強い」という実態があります。

手数料ビジネスですから、顧客や利用者が投資・資産運用で得をしても損をしても、手数料は入ってくるという構造が問題です。

日本人は、こんな環境のなかで自分に合った投資方法・資産運用方法を見つける必要があります。つまり、目利き力が必要ということになりますが、難易度はかなり高いでしょう。

日本円は守りに向く通貨

日本人相手に海外の金融商品や不動産を売る際の典型的なセールストークがあります。

「日本政府は膨大な借金を負っている。その額は、国民一人あたり…」
「ハイパーインフレや預金封鎖が起きたら…」
「日本円だけで資産を持っていることは危ない…」

などの内容です。

私は、暗号資産(仮想通貨)を含めた複数の通貨を保有していますが、世界がフラット化する社会ではこれはごく自然なことです。もちろん、日本円も持っています。

日本円の資産は、実は頼もしい資産です。

・世界一の債権国として安定感がある
・資金調達コストが低い

という、いわゆる「守りに向く通貨」とも言えます。日本円だけで資産を形成しようとは思いませんが、持ち続けておきたい通貨の一つであることは確かです。

米ドル、ユーロ、英ポンド、スイスフランなどの世界各国の通貨であっても、ビットコイン(BTC)、リップル(XRP)、イーサリアム(ETH)などの暗号資産(仮想通貨)であっても、それぞれにリスクはあります。新興国通貨を持つかどうかは、もはやお好み次第です。そんななかで、日本円の「政府債務リスク」なんて相対的にみて大したことではないと思うのです。

日本円資産の問題点は、一言で言えば「殖やしにくいこと」です。金利はマイナスで、不動産を持っても利益が出るかどうかは相当な目利きが必要。金融商品の収益率は決して高くはない…そんな環境で賢くやって円を殖やしたとしても、次は税金との戦いが待っています。

資産を失うのは一瞬

新型コロナウイルスの感染拡大が始まった頃、一時はコロナショックが起こりましたが、その後は株価やビットコインなどの暗号資産の価格は上昇を見せ、コロナバブルのような装いになりました。市場の盛り上がりから、大きな利益を得た人も少なくないでしょう。

しかし、それはしょせん「含み益」です。利益を確定しない限りは、数字が上がったり下がったりしているだけのこと。仮に買った後に価格が下がり、含み損が出たとしても、損を確定させない限りはただの含み損です。

つまりは、日々の値動きに一喜一憂しない方が精神衛生的に良い、ということになります。

2017年には、「億り人」という言葉が流行りました。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)投資によって得た利益を堅実に使った人もいれば、あぶく銭的に使い果たしてしまった人もいます。

億り人が億り人で在り続けるのは、極めて難しいことのようです。もっともそれは、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)に限った話ではありません。

世界中の億万長者の資産は今、過去数十年に比べて「不安定」であると、スイスのチューリヒ・バーゼルに本拠を置くスイス最大の銀行であるUBSと、ロンドンを本拠地とした世界最大級のプロフェッショナルサービスファームPwCによるレポートが伝えています。

レポートによると、2009年に20億ドルの財産があった70人以上の億万長者が、2020年までにもう億万長者ではなくなっているそうです。

UBSとPwCによれば、2019年の脱落者は億万長者の1.7%に達し、2010年の0.3%から大幅に増えています。脱落者のほとんどが、全財産を1つの企業に投資しており、それが厳しい状況に陥り、徐々に価値が失われることになったようです。

投資話には独自フィルターを


「お金はさみしがり屋」

とよく言われます。確かに、そんな性格はあるかもしれません。

さみしがり屋のお金が寄ってきても困らないのですが、困るのはお金に汚い人たちが寄ってくることです。投資話や儲け話を持ってくる人の約95%は、私や私の周囲の人から資金調達、あるいはお金を出させて、自分が先に儲けることを考えています。

1億円を消費で使うのは大変なことですが、投資で失うのは一瞬です。ですから私の場合、投資話には独自フィルターをかけるようにしています。

まず、オンライン・オフラインを問わず交流のない人からの投資話・儲け話は聞きません。過去につながりのあった人であれば、時間さえ合えば会うようにはしています。ですが「会ってみたら投資勧誘だった」となれば、その後は疎遠になります。

一方、「こういう投資商品で、これくらいの実績値が出ている。メリットはこう。しかし、デメリットやリスクはこう想定される。リスクを取れる人だけに投資してもらいたい」という全体像を最初から伝えてくれれば、少し会う気になります。

ぜひ独自フィルターをつくって、怪しい投資話をブロックしてください。

できることなら、億り人になったらずっと億り人で、億万長者になったらずっと億万長者で在り続けたいところです。

そのためには、「余計な投資話には乗らないこと」「生活水準を急激に上げないこと」「富をひけらかすような行為をしないこと」「お金や資産の使い方に人の本質が現れると知ること」が大切だと感じています。

人は弱い生き物ですから、堕落するのはいとも簡単です。あぶく銭的に浪費せず、生きたお金の使い方をしたいですね。

中島 宏明

中島 宏明

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経営者のゴーストライター

2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。

暗号通貨草創期からの投資家仲間を通じて、草創期からの投資家しか知りえない暗号通貨に関する情報を取得している。

現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島でアパート開発と運営を行っている。

マイナビニュースで、投資や新時代の働き方をテーマに連載中。

連載一覧 https://news.mynavi.jp/author/12228/

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