日々会社を経営していて、自分もそろそろ50代後半。人生の折り返し地点を過ぎると、「自分の会社をどうしようか」という悩みも出てくるでしょう。中小企業の後継者問題は、新聞やウェブメディアでも多く取り上げられています。また、連続起業家として起業とM&Aをくり返すという道もあります。では、会社の出口戦略にはどのような選択肢があるのでしょうか。
会社の出口戦略は事業承継、MBO、M&A、IPO、廃業の5つ
会社経営における5つの出口戦略は、以下のとおりです。
・子どもや親族に後継者になってもらう(事業承継)
・社員に会社を引き継いでもらう(MBO)
・会社を売却する(他人承継、M&A)
・株式を公開して上場する(IPO)
・会社経営を辞める(廃業)
5つのなかでも、できることなら廃業は避けたいと考える経営者の方は多いのではないでしょうか。
廃業は、とても負担のかかる選択肢です。家族、社員、顧客、取引先…など、方々に迷惑をかけることになります。筆者も自分で立ち上げた事業を、一部は事業譲渡して辞めたことがありますが、当面の生活費の確保や事業譲渡(お客さんとスタッフの引き継ぎ)、スタッフの再就職のサポート、取引先へのあいさつなどで苦労しました。起業は前向きな行動なので大変でも乗り越えることができますが、会社を辞めるという後ろ向きな行動は、精神的にも身体にも負担になります。
せっかく自分で起業し、続けてきた会社ですから、廃業するよりも、子どもや親族に事業を受け継いでもらったり、社員の方や他の会社に引き継いでもらう方がうれしいでしょう。
現実的な出口戦略はM&A
ところが、「子どもが会社を継いでくれる」というのは、かなり幸運なケースともいえます。お子さんと一緒に働けたり、ましてや会社を任せられるなんてことは、なかなかないでしょう。
社員の方に引き継ぐことも考えられますが、役員報酬や給与という収入しかない社員の方が株を買い取れるかというと、現実的にはそう簡単ではありません。
会社によってはIPOを目指すことも可能ですが、日本企業全体のうち上場企業は0.1%しかありません。上場準備に入る多くの会社は、途中で上場を諦め、挫折しています。審査には、コストも労力もかかりますので、上場を目指せる会社の方が稀です。
となると、他の会社に引き継いでもらうM&A(他人承継)が現実的になります。会社を売却してしまうことをネガティブに捉える経営者の方も多かったのですが、最近ではその意識も変化してきています。それだけ、M&Aが身近になってきたということでしょう。
M&Aや出口戦略の相談ができる相手を持とう
ところが、自分の会社をだれかに譲りたいと思っても、相談できる相手はなかなかいません。多くの税理士さんは税務のプロではあっても、M&Aのプロではありません。銀行や金融機関も同様です。M&Aに詳しい人は、身近になかなかいないものです。しかも、ただM&Aに詳しいだけでは、ポジショントークをされて騙されてしまうかもしれません。本音を言える相手でないと、相談もままなりません。
相談相手がいないという事態にならないよう、普段から相談できるメンターと知り合っておくと良いでしょう。定期的に会う必要はありませんし、相談相手を一人に絞り込む必要もないと思います。本音を話せて、誠実な人。ときどきでも、気軽に話ができる人。人と人を引き合わせるのがうまい人。そんなメンターを持てる人は、会社の出口も素晴らしいものにできるはずです。