前回の『オーナー社長が抱える経営のモヤモヤを晴らす方法②書き出した課題を仕分けする』では、書き出した課題を仕分けするための考え方や方法ついてまとめました。今回は、頭の中のモヤモヤをさらに晴らせるよう、仕分けした課題の優先順位のつけ方についてお伝えします。
【再掲】中小企業の経営課題
振り返りとして、中小企業の経営課題や悩み事のカテゴライズ、中小企業オーナーが得ておくと良い知識について再掲します。
【中小企業の経営課題】
・頼れる参謀がいない
・経営のリスク管理ができない(士業、専門家との関わりがない)
・よい人材の採用ができない
・採用してもすぐに辞めてしまい、人材が定着する仕組みがない
・財務を知らない(手元キャッシュいくらあれば良いのか知らない、銀行交渉ができない)
・自社や自信の強み、資産(無形資産/有形資産)がわからない
・常に頭の中がモヤモヤしていて、物事の優先順位がつけられない
・業績は良いが個人資産があまりなく、将来が不安
・業績悪化してしまい、業種転換や経営の多角化が必要だけど何をしたら良いかわからない
・後継者がいない
・出口戦略がない(親族内承継、M&A、廃業、IPO)
【悩み事のカテゴライズ】
・「人」「売上」「資金繰り」という3大経営課題
・「ヒトモノカネ+情報、時間」という経営資源
(例)
ヒト⇒採用できない、人が定着しない、人事評価制度などの仕組みがない、外注化できない
モノ⇒商品・サービス開発力が弱い、単価の安い商品・サービスしかない
カネ⇒財務がわからない、資金繰りが厳しい、銀行交渉の経験がない、決算書の読み方がわからない
時間⇒なぜ忙しいのかわからない、スケジュールをどう組めば良いのかわからない
情報⇒すぐに投資詐欺に遭う、どんな情報なら信用できるのかわからない
>>>参考記事:経営者の悩みをカテゴライズする
【中小企業オーナーが得ておくと良い知識】
・自社や自分を支えてくれるビジネスパートナーや社員の探し方
・会社の価値の上げ方
・会社の売却の方法
・出口戦略(ゴール)から逆算したビジネスのつくり方
・社長から経営者に一皮むける方法
・社長の人生計画と会社の人生計画のつくり方
・課題の言語化や強み、資産の棚卸の方法
・後継者や幹部社員の見つけ方、育て方
・資産構築や資産運用の方法
課題を仕分けした後のステップは「優先順位づけ」
日々のモヤモヤや悩み、気がかりなこと、課題をひたすら書き出し、仕分けをしたら、次にするのは「優先順位づけ」です。
・重要度
・緊急度
の2つの軸で仕分けした課題や懸念、気がかりなことをもとに優先順位をつけていきます。
私は、顧問やアドバイザーとして、さまざまな会社の経営会議に参加しています。会議では、当然ですがどの課題に取り組むかという話になります。その中で気をつけなくてはいけないことは、「課題をタスクまで落とし込むこと」と「優先順位を意識すること」です。
課題をタスクまで落とし込むこと
課題をただの課題のままにしておくと、一向に解決しません。課題を解決・解消するための具体策まで落とし込み、タスク化しておく必要があります。例えば、
・アドバイスを聞くために、○○さんに相談する
・人手不足解消のために、求人広告を出す
・人材が定着するように、施策を3つ考える
・新規事業立ち上げのために、M&Aの売り案件を10案件ピックアップする
・海外進出のために、海外視察の日程と目的を決める
・売上を上げるために、競合他社の事例を5つ調べる
・資金繰りを改善するために、財務に詳しい専門家を探す
などです。いきなり解決・解消できる課題もありますが、多くはそこに至るまで時間がかかります。スモールステップで、まずはできそうなことから。小さな一歩を踏み出すことの方が重要です。
優先順位を意識すること
会議をしていると、大きな課題から小さな課題までありとあらゆることが挙がってきます。そうすると、なにから手をつければ良いのか、優先順位がわからなくなることがよくあります。そうならないように、常に優先順位を意識し、会議の中で整理しておく必要があります。
前回の、
オーナー社長が抱える経営のモヤモヤを晴らす方法②書き出した課題を仕分けする
でご紹介した重要度・緊急度のマトリックスで整理しておくと優先順位をつけやすくなるでしょう。
重要度も緊急度も高いAの領域はなるべく発生しないようにし、重要度は高いが緊急度は低いBの領域に集中する方が経営者としては良いでしょう。重要度は低いものの緊急度が高いCの領域は社員やスタッフに任せるようにし、重要度も緊急度も低いDの領域はそもそもやらないという決断を下すことも経営判断です。
重要度・緊急度のマトリックス
「課題をタスクまで落とし込むこと」と「優先順位を意識すること」の他に気をつけているのは、その課題を解決した後の影響と解決までのスピードです。
その課題を解決すると、どれくらいの影響があるのかを数値化してみるようにしています。わからなかったとしても、仮でも良いので数値にしてみることが重要です。影響が大きいことほど、優先度は高くなります。
もう一つ気をつけているのが、その課題を解決するのにどれくらいの時間がかかりそうかです。優先度が低いとしても、サクッと完了できることであれば、すぐにやってしまった方が良いでしょう。
解決すべき課題がいくつもあると、モヤモヤを晴らすことはできません。モヤモヤの原因となっている課題の数を減らすことも重要です。また、小さくても課題を解決することができると、社内の成功体験につながります。その体験が次の行動につながっていきますから、小さくても成功体験を積むことは良い効果をもたらすでしょう。
本稿では優先順位について解説しましたが、大前提として優先順位は常に変わるものです。経営は日々状況が変化していきますので、変化に合わせて優先順位も入れ替わります。最初に決めた優先順位にこだわりすぎず、柔軟に対応しましょう。基本的には、会社全体をみている経営層が、全体最適化を考えながら判断ができるものです。それが難しい場合は、外部のアドバイザーを頼るのも一考でしょう。
次回以降、優先順位をつけた課題等をどうやってスケジュールやタスクに落とし込むかをご紹介していきます。