先行きの見えにくいVUCAの時代。改めて知っておきたいのが、物事の原理原則や普遍的な真理です。過去の偉人たちや数々の事業・会社を立ち上げ、成功させてきた創業経営者たちの言葉には、そんな原理原則と真理がたくさん含まれています。ベストセラー作家としての顔も持つ江上治の数々の著書のなかから、「江上治が改めて伝えたいメッセージ」として抜粋してお伝えします。
江上治著『運命転換思考 一生かかっても身につけたい5つの「働き方」改革(経済界)』の内容を抜粋、一部編集しております。
成長は明日への「伸びしろ」が重要
運が悪い人、運気を下げる人というのは、考えるとき、ものをいうときの主語が、すべて「私」です。
私「は」儲けたい…、私「が」うれしいのは…。
「私は」「私が」という思いは「我」です。
自分が、という「我」を手放さなければ、どんなに素晴らしいメンターと出会っても、どんなに素晴らしい話を聞いても、いつまでも運命を書き換えることはできません。
そこには「受け入れる」という謙虚さが、まるでないからです。
ビジネスにおいていえば、「私」から離れて、「お客様」「他人」が主語にならなくては、その先が展開しません。
お客様をどう喜ばせるか。
お客様の価値をいかに上げるか。
上司をどう勝たせるか。
このように他人を主語にしたほうが、「私」を主語にするよりも美しいのです。人から好かれます。ファンづくりにもなります。
面白いもので、自分の人生が傾きかけると、人は「私が」「私が」という傾向があります。
何とかして、落ち目の人生を立ち直らせたいと思うあまりでしょうが、その焦りがまわりを見えなくして、かえってよくない結果を生みます。
また、「自分はすごい」と思ったとき、その瞬間から人は落ちていきます。
松下幸之助さんは、物事がうまく運んだときには、これは運がよかったと思い、失敗したときには、「これは自分のせい」と考えていたといいます。
成長は、できないことができるようになることですが、「できたぞ、自分はすごいぞ」と思ったときには、もう先がありません。まだ足りていないところがある、できていないところがたくさんある、と考えて努力してゆくなかで、成長があるし、成功もあるのです。
できたことよりも、明日に向けた伸びしろが大きいほうが、もっと重要です。
質問は運命を変える
言葉の力が、いちばん発揮されるのは、質問するときです。
質問は、運命を変えます。運命を変えたいのならば、質問力を生かすべきです。
ビジネスでも日常の生活でも大切なのはコミュニケーション能力ですが、このコミュニケーション能力というのは、
「質問力×貢献力×傾聴力(共感力)」
の方程式で表されます。的確な質問をし、その質問が相手に対して貢献するものであり、相手のいうことに心から耳を傾ける。
これによってコミュニケーションというものが、上手に図られるのです。
相手を上げて、いい気持ちにさせる質問。
相手の心を開かせる質問。
これがよい質問です。よい質問はコミュニケーションを促しますが、逆にコミュニケーションを阻害する悪い質問もあります。むしろ日ごろは、こちらのほうを多く使いがちかもしれません。
営業マンで、会っていきなり、こう聞いてくる人もいます。
「ところで、江上さん、年収はおいくらなんですか」
なんであなたに、そんなことを答えなくてはいけないの、とムッときます。
ビジネスでも日常生活でも、会話は証人喚問ではないのです。相手のことを十分に考えたうえで、言葉を選んで話さなくては、相手の気分を害するだけで終わってしまいます。