「ギバーであることが大切である」「あなたも、今すぐギバーになろう」と勧める本やセミナーは、世の中にたくさんあります。ギバーを日本語にすると“与える人”です。これからの時代、ギバーは本当に生き残ることができるのでしょうか? “与える”とは、どういうことなのか。与えることで人は成長できるのか。本稿で考えていきたいと思います。
本当にギブ&テイクで良いのか
「ギブ&テイク」という言葉があるように、社会にはギバーとテイカーがいます。ギバーは“与える人”で、テイカーは“得る人”という関係です。ここでのテイカーは、得る人よりも“奪う人”とネガティブな表現の方が正しいでしょう。
ギバーとテイカーの中間にいるのが、マッチャーという存在です。マッチャーは、フェアな取引や関係を重視します。
「貢献したのだから、その対価はこれくらい支払われるべきだ」
「仕事をしたのだから、お金を受け取るのは当然だ」
「だれとでも平等に付き合い、だれとでも対等に話す」
と考えるのがマッチャーです。
テイカーほどではありませんが、マッチャーにもどこかネガティブなニュアンスを感じます。
「ギブ&テイク」と言われるように、はじめにギブ(与える)の行為があり、後からテイク(得る)がきます。この順番は入れ替わることはなく、「テイク&ギブ」ではないのです。「テイク&テイク」は、俗にいう“くれくれ君”のような存在です。人から与えてもらうことばかり考えており、人に貢献したり尽くしたりするという発想や思考がありません。
これからの時代、テイカーはいうまでもなく没落するでしょう。一時的な利益やメリットを得ることができたとしても、あとでしっぺ返しがくるのが人生です。マッチャーは、永遠に“そこそこ”。大成することはないでしょう。「ギブ&テイク」は、マッチャーと等しい言葉ですから、ギブ&テイクの精神では今後生き残れないかもしれません。
成長できるギバーと成長できないギバー
「ギブ&ギブ」の精神を持っているギバーは、これからの時代も信用を得て信頼関係を築き、無形資産から有形資産を築くことができるでしょう。
無形資産とは、信頼関係や知恵、リテラシー、スキルなど、数値化しにくい資産のこと。一方の有形資産は、株などの有価証券や不動産、現預金など、数値化できる資産です。他には、情報資産もあります。情報資産には、有益なものと不利益なものがあります。
ギバーは、無形資産を周囲の人たちに与え、無形資産を高めながら有形資産も築いていきます。しかし、そんなギバーにも2種類います。それは、破滅するギバーと生き残るギバーです。
破滅するギバーは、ただただ与えるだけの人。このギバーは、成長することができません。全体を見ず、目の前の人に与え続けるだけでは、いつか自分が枯渇してしまいます。時間も体力も有限です。一見すると良い人なのですが、「ただの良い人で終わっちゃう」というパターンです。
生き残るギバーとは、パイを増やして人に与え、自分も得る人です。このギバーは成長し続けることができます。俯瞰して全体を見て、奪い合うのではなく与える。ただ与えるのではなく、絶対数を増やす。競争ではなく、協業や共栄、共創を重視する。そんな風に、マーケットを創れる人が、どんな時代も生き残ることができるギバーです。
生き残れるギバー、成長し続けるギバーになり、ギブ&ギブの精神を忘れずに日々過ごしたいものです。
「奪う人なのか、与える人なのか」を明確にすべきだということだ。
これを見分けるいちばんのポイントは、金の使い方である。自分のことにしか金を使わない人は得てして「奪う人」である。
人のため、部下のため、仲間のために、惜しげもなく金を使う人は「与える人」である。私はFPとして、お客さんの帳簿をくまなく見させてもらうが、成長を続ける人は必ず「与える人」である。それも、報酬はもとより、普段から社員育成など、「人」に金を使っている。
つまり、「人こそ宝」という意識が強いのである。
現代のような時代では、どこの会社でもコストカットに躍起になっているが、人に金を掛けることをやめた企業は衰退する。
『年収1億円手帳(江上治 著、経済界)』