綿密な人生計画を描き、それに沿って生きる人もいれば、無計画に日々なにかに追われながら生きる人もいます。幸福の在り方は人それぞれですが、VUCA(予測困難)な時代にはどのようなアティチュード(姿勢、心構え)を持てば良いのでしょうか。その答えは、計画的偶発性理論から見出すことができるかもしれません。今日は、VUCA時代に知っておきたい計画的偶発性理論についてお伝えします。
VUCA時代とはどんな時代なのか
VUCA(ブーカ)という言葉があります。VUCAとは、「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」を意味する言葉です。
V=Volatility(変動性)
U=Uncertainty(不確実性)
C=Complexity(複雑性)
A=Ambiguity(曖昧性)
これら4つの単語を組み合わせた造語で、現代はVUCA時代とも言われています。
VUCA時代は、ありとあらゆるものが複雑さを増し、将来の予測が困難な状態。個人や企業は、なにが起こっても臨機応変に対応できる融通性と、長期にわたる事業継続の見込みを立てておく必要があるでしょう。不確実な未来や不測の事態に備える必要性がますます高まっている、というわけです。
「自分の理想とする人生計画を立てるべきだ」という人もいれば、「人生計画なんて立てても無駄だ」という人もいます。どちらも正しいですし、その中道もまた正しいでしょう。
アップルコンピュータ日本法人社長や日本マクドナルドホールディングスCEOを務めた原田泳幸さんは、「本当のキャリアプランというのは、目の前のやりたいことにすべてを捧げることだ。そうすれば、キャリアは向こうからやってくる」と言い切っています。アップルの日本法人社長になることも、日本マクドナルドのCEOになることも、原田さんのキャリアプランにはなかったそうです。
確かに不確実な未来のことよりも、いま目の前のことに集中した方が良い仕事ができるでしょう。日々の積み重ねが信頼性や能力、スキルを高めてくれます。そうして築いた無形資産が数年後に花開き、本当にやりたいことの実現につながることもあるかもしれません。
計画的偶発性理論とは
「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」という理論をご存知でしょうか。
計画的偶発性理論は、心理学者のジョン・D・クランボルツ教授が1999年に発表したキャリア理論です。クランボルツ教授は成功したビジネスパーソンのキャリアについて調査を行い、「そのターニングポイントの8割が、本人の予想しない偶然の出来事によるものだった」と結論付けています。
「なにをしたいかという目的意識に固執すると、目の前に訪れた想定外のチャンスを見逃しかねない」と、クランボルツ教授は指摘しました。
<計画的偶発性理論の骨子>
1.予期せぬ出来事がキャリアを左右する
2.偶然の出来事が起きたとき、行動や努力で新たなキャリアにつながる
3.何か起きるのを待つのではなく、意図的に行動することでチャンスが増える
「予測困難」とされるVUCA時代ですが、見方を変えれば「予期せぬ出来事が起こる」とも言えます。予期せぬ出来事がポジティブに転ずるかネガティブに転ずるかは、捉え方と行動次第でしょう。
夢は叶えるものではなく、途中を生きること
何事もやってみなければ始まりませんから、行動することがきわめて重要です。考えてみれば当たり前のことなのですが、考え過ぎて行動できない人は案外多いものです。
人生計画を立て、夢リストを書き出すことも大切です。しかし一方で、書き出して言語化してみると熱が冷めてしまうかもしれませんし、どこか“やっつけ感”を覚えてしまうかもしれません。
夢や目標は、意識的に叶えたり実現していくものというよりも、「夢の途中を生きている」感覚のなかにいる方が幸福なのかもしれません。不測の事態を楽しみ、偶然の産物を楽しみ、そんな人生を丸ごと楽しみたいものです。
「これだけをやれ」
と言われて生きるのは、つらい話である。確率としてそれだけである。あまりにも限定されている。ひじょうに狭い道を歩んで行くようなもので、人との出会いも運との出会いも、きわめて限られてくる。
井の中の蛙、大海を知らずになってしまう。大きな世界を知らないまま大人になって、そこから抜け出せなくなる。あるいは食わず嫌いの人間になってしまう。
「あれもこれもある。好きなことをやってみなさい」
と言うならば、垣根がないから縦横に行動できるだろう。人との出会いも多いし、お手本になるような人にも会える。好奇心の強い人間になるだろう。