オーナー経営者の方から、「投資に失敗して立ち直れない。本業に集中できない」という話を伺うことがあります。確かに、大切な資産を失ったわけですからショックは大きいでしょう。しかし、どんな著名な投資家でも、天才と呼ばれる投資家でも、適格機関投資家でも、「一度も投資で失敗したことがない」という人は存在しません。投資の機会が増えれば、失敗の回数もおのずと増えるものです。同じ過ちをくり返さないように、徐々に成功確率を上げていきたいところですが、そう簡単ではないのが投資です。では、投資で失敗したときに、どのようにメンタルを保てば良いのでしょうか。
どんな天才でも「勝率3割」
投資で失敗したときにまず知っておきたい考え方は、アスリートの世界で言えばイチロー選手のような天才でも「打率3割ほど」ということです。生涯打率となれば、もっと低くなるのかもしれません。天才なんてわずか一握りの存在なわけですから、一般的にはさらに勝率が低くなって当然なのです。ですから、10の案件に投資して3つ成功すれば、それで十分「勝っている」と言えるのではないでしょうか。
事業投資の場合、起業して3年後の生存率は約50%、5年後の生存率は約40%と言われています。また、ベンチャー・スタートアップ企業の20年後の生存率は0.3%という統計もあるようです。実際は、生存率はもっと低いかもしれません。
それだけ「勝ち続けること」「生き残ること」は難しいということです。常に3割勝てているのであれば、十分天才でしょう。ここで注意したいのは、3割勝てていると言っても「自分は投資の天才だ」と錯覚しないことです。錯覚を起こすと、視界がぼやけて決断が鈍ります。同じ過ちをくり返す原因のひとつは過信であると、心に刻んでおきましょう。
含み損であれば「一喜一憂しない」
含み損の段階で「大損した」「失敗した」「もう終わった」と絶望してしまう人もいらっしゃいます。例えば、ビットコインなどの暗号資産は値動きが激しいわけですから、個人で保有していれば日々含み益も含み損も抱えることになります。
コロナ禍には過去最高値を更新するなど、長期視点でみれば上昇傾向にある主要暗号資産ですが、いつ下降に転ずるかはわかりません。また、長期的には上昇傾向にあると言っても、日々激しい値動きがあります。ですから、一喜一憂しない方が精神衛生上良いのです。
「しょせんは含み益」「しょせんは含み損」と考えていれば、値動きを気にする必要もありません。デイトレードやスイングトレードで生計を立てているのであれば話は別ですが、投資はあくまでも余力資金、なくなってもしょうがないと思えるお金で行うものですから、気にしないのが一番です。経営者のように本業があれば、なおさらです。
投資の失敗体験は活かせる
「投資に失敗した…」といつまでも凹んでいても、失ったお金が戻ってくるわけではありません。反省は必要ですが、気持ちを切り替えて次に進んだ方が精神的にも良いでしょう。
モノではなく体験に投資していれば、お金は後からいくらでも取り戻すことができます。失敗経験を活かすか殺すかは自分次第です。成功パターンを見出すのはなかなか難しいのですが、「失敗パターン」はあるように感じています。「この手の投資話は、大抵ダメになるな」と、直感的にわかることもあります。直感でそう思った投資案件は、やはり短期間のうちに消滅しています。
そういう意味では、投資の成功確率は多少上がっているのかもしれません。とは言っても、「自分は投資案件の目利き力がある」と錯覚してはいけないとやはり思います。投資の世界でも、自戒は大切です。